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どうしようかなあと思ったけど、行って来た。国立劇場。
ええと、全国高等学校総合文化祭優秀校の東京公演。
高校の部活の演劇、日本音楽、郷土芸能の三部門の
それぞれのコンクールで優勝した高校生たちの発表。

まさかとは思ったが、もし混んでいて、
最初のお祝い口上を見られなければ
わざわざ行く甲斐がないと思い、
会場前のすごく早い時間に行ってみたが
それでもチケットを席の券に交換したら3階の9列だ。

入れない人もいたようで、だ、誰がこんなに?
歌舞伎でもこんなに入らないでしょうと思って
会場前に入口前のベンチに座っていた。

隣には椅子に新聞紙を広げ、ペットボトルのお茶と
コンビニおにぎりを置いて、正座しているご機嫌なおばさん。
後ろの人と賑やかに話していて、笑うとき
隣の私の肩に頭がごんごん当たる。
苦笑いしていたら「東京ですか?」と聞かれた。
ものすごくテンション高く、
楽しみでしょうがないといった感じのおばさんが話すことには、

自分はこの高校文化祭全国大会の追っかけである。
去年は長崎、震災の年は福島で、それでもやった。
地方でやると会場は狭い。
いつだったか、会場が狭くて客が入りきれず
2回やり、外で待っているお客のために
炎天下、外でもう一度やった、と
思い出して、泣きながら話す。

東京大会は立派な会場で見られるため
ここには毎年来ている。
文化庁もお金があるんだねえ、誰が払ってるか知らないけどさ
と大笑いだ。
こんなに素晴らしいものを知らない人が多いのは残念だ。
どんなにすごいか、NHKにハガキを書いたら読まれたらしい。
聞いた人が教えてくれた。

来年の全国大会の会場は滋賀県なので、
京都にでも一泊しようと思っている。
地方に行って、観光するより、ここでまとめて感動する方がずっといい!
あんなに素晴らしいお琴の演奏だって、
あなた始めたのは高校生になってからだっていうじゃないの!!
と、話は止まらない。

そして、バシバシと私の肩を叩くのである。
夏バテの病み上がりでへろへろしている私は
そのたび、よれよれっとなる。
向こうで長女がくすっと笑っている。

大型バスが数台停車しているので
出場校の応援の大人が大挙しているのだと思ったが
知り合いが出るわけでもなく
ただ、高校生の、勝ち負けのない賢明な芸能を観る
奇特な人がいるのだなあと聞いていた。

すごいのよねえ、高校生って。
というので、
練習がすごいですもん。
うちの娘も毎日午前様です。
早朝に出て、帰りは1時頃です。
と話した。

さっき話していた同行者に思えた人は
私のように話しかけられただけだったのだ。
「席は決まっているからゆっくりしてるわ」
というおばさんを残して
「そろそろ入ります。いいお話うかがえて良かったです
と言うと、なに言ってんのよ! てな感じで叩こうとするので
さっと避けた。

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遠い。でもここは横に長いので、見やすい。
念のため双眼鏡を持って来てよかった。
まわりを見回すと、さっきのおばさんのように
一人で来ている謎のおばさんが多いことに気づく。

前の方に席がひとつでも空いていたら
口上だけ、と座らせてもらっちゃおうかなと
甘いことを考えていたが、びっしりで無理だった。
来ているはずの中学時代の顧問の先生など
見つけられるはずもない。

1ベルが鳴り、本ベルが鳴る寸前、
斜め前の席にさっきのおばさんが座り、
さっそく隣の青年に声をかけている。
はしゃいでるなあ・・・。

チョーンチョーンチョーンと拍子木が鳴り、
歌舞伎が始まるように笛や太鼓、そして歌があって
おいおい、生かよ! すごいな、と思っていると
とざーいとーざーい。に続き大勢のとーざーい、とーざーい。
(東西は、わりと関西がメインのかけ声だと思っていたけど
こういうときも、これだっけ?)
そして緞帳がすーっと上がる。
噺家の柳家小里んが中央、両脇は女子高生とわかるが
どっちが娘だろう?
双眼鏡で見ると、左だ。
口上なので三人とも頭を下げていて
話す人だけ頭を上げる。

あーあ、満足に寝てない顔だなあ。
そりゃそうだよなあ。
毎晩、(他の芝居の)稽古で終電間際の帰りで
夕飯を食べる気力もなく、朝は5時起きで
一応持って行くが食べる暇がないという弁当を持ち
慌ただしく出て行く。
この間は気づいたら新高島平という降りたこともない駅の
ホームのベンチで寝てたっていうしなあ。
家でちらっと見ると急激に痩せたと思ったが
疲れで浮腫んでるなあ。
しかし手はあれでいいのか?
あれは男の型なのではないのか?
などと思っているうちに終わり、
緞帳がおりた。

斜め前のおばさんに、さっき肩をばしばし叩かれた仕返しに
というわけではないが、肩をちょんちょんと叩くと
あー、という顔をして、指で舞台を指し(何故か娘のいた方)
頷きながら拍手してくれた。
何故わかった?

いろいろと偉い人の挨拶は、なんと花道だ。
あそこを靴でカツカツカツと歩かれるのは
なんとなく抵抗がある。

柳家小里んさんの落語だけは聞いて帰ろうと思ったので
我慢していたが、落語が始まるとおばさんは寝ていた。
はしゃぎ疲れ? 高校生じゃないから?
東京公演は今日明日。
明日も来るのか、あのおばさん。

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プロフィール

もとしたいづみ

Author:もとしたいづみ
絵本・童話作家やってます。
エッセイ集『レモンパイはメレンゲの彼方へ』(集英社)
幼年童話『うめちゃんとたらこちゃん』絵・田中六大(講談社)
絵本『せつぶんセブン』絵・ふくだいわお(世界文化社)など

ツイッターは
もとしたいづみ
(@motoshita123)

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