悲鳴は出ません

南阿佐ヶ谷の、どっちかというと中華料理屋、
「オトノハ」の料理がすごくおいしい。

それに器もたいそう素敵にかわいくて
小皿が出て来たときは、あんまりかわいくて
娘と一緒にあやうく悲鳴をあげそうになった。

いや、悲鳴なんて出ませんけどね。今更。

というか、若い頃から悲鳴は出ない。

「悲鳴」というジャンルが、私の声にはない。
そりゃわざとらしく「きゃあ」と言うことはあっても、低い。
正式の、思わず出る甲高い声は、ない。

今思い出したけど、学生時代、合唱団の合宿で
どこだっけ? なんか湖のあるところ。
覚えてないけどそんなようなところに行った。
合宿所に向かう途中、しょぼい遊園地があって
観覧車の玩具みたいな、冗談でお父さんが作ったような
ちゃっちい乗り物があった。
そこでは一番デンジャラスな感じの。

大学生が団体でこういうところに行くときは
遊園地の乗り物得意! という人は乗せてもらえない。
怖がって、絶対いや! と泣きそうな女子や
いかにも腰を抜かしそうな大人しい男子が
乗ることになるのだ。

おそらく私はただ1年女子というだけで
乗れ乗れと言われ「いやです」と固辞したが
腕を掴まれて、面白がっていた先輩もろとも乗り込んだ。

それは二人乗りのカプセルのようなものが
いくつかつながっていて、それぞれが前転しながら前に回転するような
しかけだったと思う。

それにしてはベルトなどなく、腕で自分の体重を支えるしかない
そんな原始的なものだったと思う。

しょっぱなから私は自分の細腕で体を支えることができず
動き始めてすぐに床に転がったのだと思う。
そして「うっ」と小さく唸ったまま無言。
ずっと無言。

一緒に乗った先輩も驚いて無言だった。
え、え、大丈夫?

下界ではやし立てていた先輩たちは
いきなり私の姿は見えなくなるし
悲鳴どころか声も聞こえず、
一体どうしたのかと、その回転が終わるまで
見守っていた。

そう、こういうのは「きゃー」と聞こえれば
観客は喜び、ひきつった顔を披露しては
拍手して、涙など流しながら出てくれば
大喜びなのだ。

いきなり腰を抜かし、無言、というのは
どんなに白けさせたことだろう。
同行の先輩もしきりに謝っていた。

そういえば、結構上品な大人しい大学のサークル
と思っていたけど、時代相応に荒々しく
いろんな目に遭ったなあ。
男子風呂に落とされたり、布団で巻かれたり
うつぶせにされて両手足を4人がつかみ、
バタバタと天井と床を往復するのを「モスラ」と言った。
なんかそういういじられキャラの男子がやられるようなことを
全て通過した気がする。
なんで?
悲鳴あげないから?

KC4D0002.jpg

あ、全然違う話になった。
で、上はえーと、その、かわいくて悲鳴をあげたかったけど
悲鳴は出なかった清水直子さんの器。

オトノハ10周年記念の朝市で、ゲットしたのだった。
いいでしょ。

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プロフィール

もとしたいづみ

Author:もとしたいづみ
絵本・童話作家やってます。
エッセイ集『レモンパイはメレンゲの彼方へ』(集英社)
幼年童話『うめちゃんとたらこちゃん』絵・田中六大(講談社)
絵本『せつぶんセブン』絵・ふくだいわお(世界文化社)など

ツイッターは
もとしたいづみ
(@motoshita123)

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