ついていけない

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夕方、うちのマンションのエントランスを出ると
スマホを凝視する人たちがたくさんいた。

3.11を思い出した。

あのとき要町のとあるマンションから外に出て、
そんなにオオゴトになっているとは知らず
なんだかやけに人が多くて、みんな携帯片手に
座っているなあと思ったのだった。

しかし最近のこの現象は、連絡がつかない家族などに
何度もメールや電話を試みているのではなく
ポケモンGOだ。

やらないので知らないが、
どうやらマンション前のマクドナルドが
その、なんかがいるだかなんだかで、
人が集まるんだそうだ。

今日は友達の命日だった。
私は今年、行けなかったのだけど
友人から「遅れて駆けつけるけど
すぐに帰る。ポケモンしながら」
とメールが来た。

そのあとで、
法事が行なわれたお寺がポケストップというのになっていて
近所のライバルのお寺がバトルジムなので
さっそく住職はバトルに行って、負けたそうだが
今日はみんなでポケモンつかまえたりして
楽しかったよとメールが来た。

添付ファイルには8年前に亡くなった友達と
フシギダネとのツーショット。
わくわく感が伝わってくる法事の報告だ。

年寄りの法事ではこんなことないでしょうけど
若くて亡くなった友達だったので
まわりも、そしてお寺の住職も、若いのだよね。

次女と新宿に行った帰り道、
「急にお腹が空いたから中村屋でオムライスを食べたい」
と言うので、リニューアルされて以来初めて、
中村屋の地下2階に行った。

こういうとき、長女は何が食べたいとか、どこがいい、とか
明確に言わないし、本人もよくわからないようで
味の濃いものが食べたいかも。麺かなあ。
とか言いながらあっさりした和食を選び、ご飯を注文したあと
「あ、麺じゃない」と自分で驚いている。

中村屋にオムライスなんかあったけなあと思ったら、あった。
食後に飲み物メニューを見ると
インドティーというのがあった。
まあ紅茶はだいたいインドだなと思っていたら
ミルクコーヒーのような濁ったものが来た。

「え? これはなんですか?」

「インドティー」

にこりともせず、そう言う。
ずっと観察して笑っていたのだけど
ここのスタッフ、全員面白すぎる。
コントか? というほど、いちいち笑えるのだ。
厨房との出入り口傍のテーブルに案内されたので
特にそう思うのかもしれない。

「鈴木さん!!!」と叫びながら出て来た男がいて
スタッフ数名が「え?」と振り返り、
鈴木さんに、何故かガラケーが渡され
鈴木さん、ガラケーで喋りながらお盆を小脇に抱えて退場の図、とか。

みんな狭い通路に置いてある観葉植物にぶつかり、
顔に葉っぱをばさばさ当てながら出てくる。
「あれ、どかせばいいのに」
娘が言った。

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なに、これ? インドティー? と
飲んでみると、今までに飲んだことのない味。
「うわ、甘いっ! うーん・・・なんか、家具の味だ。・・・タンス?」
と言うと、娘は声も出ないほど笑って
笑いながらスマホをいじっている。

ツイートしたようだ。早すぎる。
すぐにリツイートされ、いいねがついて
「お母さん、グルメだね」というコメントまで来た。

まだ二口ほどしか飲んでいない。

そこでやっと、そうか、これはチャイで
スパイスが独特なのかと気づいた。

世の中についていけない・・・。

雑誌で紹介される絵本を読んで、コメントを書く。
絵本をゆっくりめくりながら、ひらがなの世界にほっとした。

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プロフィール

もとしたいづみ

Author:もとしたいづみ
絵本・童話作家やってます。
エッセイ集『レモンパイはメレンゲの彼方へ』(集英社)
幼年童話『うめちゃんとたらこちゃん』絵・田中六大(講談社)
絵本『せつぶんセブン』絵・ふくだいわお(世界文化社)など

ツイッターは
もとしたいづみ
(@motoshita123)

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