さらしん モンブラン


網島の帰り、自由が丘で降りた。

私がサンリオに勤めていた頃、
とても面倒見のいい優しい先輩が住んでいて、
ついこの間まで学生だった私たちに
いろいろと教えてくれた思い出の町だ。

社会人なのだから、靴はこれくらい高級な店で買わないと、とか
女が居酒屋で飲むときは、これくらい控え目に、とか
下着はいいものを、とか、
あなたは意外とこういうものが似あうのよ、とか
いろいろ教えてもらったなあ。
などと思いながら歩いた。
ここへは、たまにしか行かない。ほとんど用事がないのだ。

一度だけ入ったことがある「二八庵さらしん」に入った。
お店を覗くと、満席か、定休日のことが多かったけど
土曜日の夕方なのに、タイミングよくするっと入れた。

冷たい「梅かいわれ」そばを食べる。ああ、おいしい!
そして、おやつツイッターのレポートのために(という大義名分により)
蕎麦屋の傍の「モンブラン」に入った。
閉店間際なのか、ショーケースがほとんど空っぽのせいか
さっきまですごい混雑だったのに、人がほとんどいない。

ずずいと入って、いつも値段の高さに躊躇して
確か1回ぐらいしか食べたことがないモンブランと
紅茶を注文する。

160723_1823~01

ツイッターにも書いたけど
670円。高いわ。どう考えても。
なにか・・・納得できない。
これは手間がかかってる、とか
これ、なかなか手に入らないよね、というものが
見つからない。
せいぜい「モンブラン発祥の地」ってところだろう。
土地代とか。

ここは先輩、素通りしてたもんなあ。
その後、先輩が高知へ嫁に行き
たまに上京して自由が丘で待ち合わせするときなど
必ず行ったのが、ハイアニスポート。
当時、自由が丘にたくさんあったアーリーアメリカン調の喫茶店だ。
『NONNO』で紹介されるような店だ。
あの頃のおやじは、私たち若い娘が「ノンノ」と言っても「ノンノン」と
言ってた。「アンアン」と混ざっていたのか。
今ならよくわかるが、当時は、頭悪いんじゃないの? と思っていた。
今、私はそう思われているのだろう。

でも、もうこの店はつぶれてしまい
今は、洋服屋さんになっている。

通るたび、そんなに大掛かりな改装はしていないようだな
と入り口を眺めたりはしていたが、思い切って入ってみた。

ブティックにするには無理のある内装。
こんなに狭かったっけ? ちょっとコンパクトな印象だ。
洋服がたくさんあるからだな。
段差が多く、置くまで行って、おお、ここは厨房だったな。
あ、プリンとか生クリームとか冷やしていたケースだ!
アクセサリー入れてるのか! おー。
懐かしくなって、思わず聞いてみたくなったけど、
ずっとお喋りしている二人の店員は、知らないだろうなあ。

たまに、私のような客が来るのだろうか。
あ、この手のおばちゃんは、あれだ、と判断したようで
買うことを期待されてないのを全身で感じた。

思い出の町を懐かしんで歩くようになっては
人間おしまいだぞ。



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プロフィール

もとしたいづみ

Author:もとしたいづみ
絵本・童話作家やってます。
エッセイ集『レモンパイはメレンゲの彼方へ』(集英社)
幼年童話『うめちゃんとたらこちゃん』絵・田中六大(講談社)
絵本『せつぶんセブン』絵・ふくだいわお(世界文化社)など

ツイッターは
もとしたいづみ
(@motoshita123)

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