蕎麦屋の教師


ときどき行く蕎麦屋に入ろうと思った。

大集団の大歓声が聞こえた。
まさか、とは思ったが、戸を開けたら
蕎麦屋の店内が大きな笑い声でわんわんしている。

ここはBGMもない静かな店なので
本など読むのにちょうどいいのだ。

がらがらがらっという引き戸の音も聞こえないので
まさかこれ、貸し切りの大宴会? と思い
「あの、いいですか?」と
厨房中の後ろ姿に声をかけたが、それも聞こえないようで
大騒ぎがちょっと静まるまで待った。

大人なのにこんな大声で笑う人たちが・・・といっても6人ぐらいで
なんだかもう「はーいはい」パンパンと手を叩いて
「しーずーかーに!」と、学校の先生になって言いたかったが
まあいいやと席についた。

よく見なかったけど学生だろうか。
言葉遣いが学生だ。
けど、会話を聞いていると「先生」「明日は会議だけ」
「〇〇先生はプールがある」「主任は55歳で、子どもが私と同い年」
「奥さん」などという会話から、近所の小学校の教師が
1学期終えてお疲れさん! プラス、誰かがオーストラリアに行く壮行会
だとわかった。
小学生ではなく、小学校の先生だったのか!

けど「ちげーよ!」「っるせーなー」などと
言葉も、そして何よりもノリが学生のままなのだ。
すごく無邪気というか。
いや、これは小学生と過ごしているから
小学生化しているのか?

東京の公立小学校の採用試験に合格して教師になるなんて
すごく優秀な人たちなのだろう。
20代、30代の先生たちのようだ。

やけに正しい日本語を操り、
まわりを気にして不自由そうにこそこそして
近所で酒など飲まない品行方正な教師像は
もう古いのかもしれないな。

だけど、他にもお客がいて、店の中が自分たちの声で
わんわんしている状態を、酒で声が大きくなっているのを差し引いても
すみませんと思う気持ちがないとなあ。
社会人として。

ここは職員室じゃないんだから。

でも「プールの授業での水着の露出度問題」や
「クラス運営プランを隣のクラスの先生のをそのまま使う」
「去年の忘年会では家に着いたのが5時」という先生は
酒癖が悪いことで有名であり、
「前の学校に11年もいた」(問題がある教師は異動できないということ?)
などと普通は決して聞けない教師の話を聞けちゃった!

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

もとしたいづみ

Author:もとしたいづみ
絵本・童話作家やってます。
エッセイ集『レモンパイはメレンゲの彼方へ』(集英社)
幼年童話『うめちゃんとたらこちゃん』絵・田中六大(講談社)
絵本『せつぶんセブン』絵・ふくだいわお(世界文化社)など

ツイッターは
もとしたいづみ
(@motoshita123)

最新記事
検索フォーム